私たちは毎日無意識のうちに玄関の鍵を施錠したり解錠したりしていますがこの一連の動作には単なる防犯上の意味を超えて心理的なスイッチを切り替えるという重要な役割が隠されていることに気づいている人は意外と少ないかもしれません。朝家を出て玄関のドアを閉め鍵穴に鍵を差し込んでカチャリと音を立てて施錠するその瞬間私たちはプライベートな空間である家での自分から社会的な存在としての自分へと意識を切り替えておりあの金属音は言わば今日一日を戦うための開始の合図のようなものとして機能しているのです。逆に仕事を終えて疲れた体を引きずりながら帰宅しドアの前で鍵を取り出して解錠する動作は社会の荒波から解放され安心できる我が家の聖域へと戻るための儀式であり鍵が開く音と共に私たちは肩の荷を下ろし本来の自分へと戻っていくことができるのです。このように施錠と解錠は物理的な空間の遮断と開放を行うだけでなく私たちの心の中にあるオンとオフの境界線を明確にするためのアンカーとしての役割を果たしておりもしこのプロセスが失われてしまえば私たちは常に緊張状態を強いられるかあるいは逆にいつまでも仕事モードから抜け出せないまま家で過ごすことになってしまうかもしれません。実際にテレワークが普及して家から出ることが少なくなった時期に多くの人が仕事とプライベートの区別がつかずにストレスを感じたという事例がありましたがそれは通勤という移動時間の消失だけでなく出勤時の施錠と帰宅時の解錠という心理的な区切りの儀式がなくなったことも一因ではないかと考えられます。だからこそたとえ一日中家にいる日であっても意識的に玄関の鍵を確認したり窓の施錠を点検したりすることで自分のテリトリーが守られているという安心感を再確認することはメンタルヘルスの観点からも非常に有意義な行為だと言えるでしょう。鍵をかけるということは自分の生活を守るという意志の表れであり鍵を開けるということは自分を受け入れてくれる場所があるという幸福の証明でもありますからこれからは単なる作業としてではなく心の安定をもたらす大切なルーチンとして施錠と解錠の一つ一つを丁寧に行ってみると日々の生活にまた違った味わいが生まれるかもしれません。