近年、多くの住宅で採用されているディンプルキーは、その防犯性の高さから人気を集めています。従来のギザギザした形状の鍵とは異なり、鍵の表面に大きさや深さの異なる複数の窪み(ディンプル)が設けられているのが特徴です。この複雑な構造が、不正開錠を困難にしています。ドアロックの基本的な仕組みは、鍵を鍵穴(シリンダー)に差し込むことで、内部にある複数のピンが適切な高さに押し上げられ、シリンダーが回転可能になるというものです。従来のピンシリンダー錠では、ピンが一列に配置されているため、ピッキングと呼ばれる不正開錠の手法に対して比較的脆弱でした。ピッキングは、特殊な工具を使ってピンを一本ずつ適切な高さに持ち上げ、シリンダーを回そうとする行為です。これに対し、ディンプルキーが採用するディンプルシリンダーは、ピンが上下左右、あるいは斜めなど、複数の方向から立体的に配置されています。さらに、ピンの数自体も従来の鍵より多いのが一般的です。このため、鍵を差し込んだ際には、表面のディンプルがこれらの複雑に配置されたピンを同時に、かつ正確な深さまで押し上げなければなりません。この三次元的なピンの配置と数の多さが、ピッキングによる不正開錠を極めて困難にしています。熟練した鍵屋であっても、ディンプルキーのピッキング開錠には高度な技術と特殊な工具、そして長い時間を要することが多く、場合によってはピッキングでの開錠が不可能なケースも少なくありません。さらに、多くのディンプルシリンダーには、ピッキングを妨害するための対策が施されています。例えば、アンチピッキングピンと呼ばれる特殊な形状のピンが組み込まれており、ピッキングツールで不正に操作しようとすると、ピンが引っかかってシリンダーが回転しなくなる仕組みになっています。また、ドリリング(ドリルによる鍵穴破壊)を防ぐために、シリンダー内部に超硬金属製のガードピンが埋め込まれている製品もあります。このように、ディンプルキーはその構造的な複雑さと、様々な不正開錠対策により、高い防犯性能を実現しています。そのため、もしディンプルキーの鍵を紛失したり、閉じ込めてしまったりした場合、自分で開けることはほぼ不可能と言って良いでしょう。
ディンプルキーの構造と開錠の難しさについて